2006年 02月 02日
タイトルからして、評論家的な人が書いた危機あおり的な本だろうと思ったら違っていた。分子生物学者がその領域の知識からBSE問題を考えている本であり、BSEの恐怖みたいな話はあまり出てこない。 まず、著者はシェーンハイマーの「動的平衡」論を紹介する。生体の構成は元素レベルで常に高速に入れ替わっているというもの。その理論の当否はともかく、ちょっと変なのは以下の部分(P60)。生体に窒素15標識のアミノ酸を与えたら、3日間で投与した窒素15の56.5%が身体にとりこまれていた。そのあとで、これから、3日で身体のたんぱく質が半分入れ替わるとしているが...。投与量の半分が取り込まれることと生体量の半分が変わることは違うはず、何か説明をはしょったのだろうか? 次に、プリオン説を打ち出しノーベル賞を取ったプルシナーという人の説と行動について、著者は厳しい目を向ける。どうもプリオン説は怪しいらしい。 ともかく、こういった基礎的な解説はなかなか興味深く参考になるのだが、最後のBSE対策となると今一歩という感じ。要するにこんなにわからないことがあるのだから徹底的に排除すべきだと言うだけである。また全頭検査の費用について、「消費者価格に転嫁されておらず、税金でまかなわれている(から問題ない)」といった変なことを述べている。目に見えない負担ならいいんだろうか? 世の中の全てのことがわかっているわけではない、アレルギー物質の作用だって専門家の立場からはわからないことだらけだろう。だからといって全ての食品を検査し排除せよとまでは言わないのだが。
by iron_pen
| 2006-02-02 00:00
| 科学技術・IT
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