2007年 11月 06日
チェスへの招待 / ジェローム・モフラ / 成田恭二、小倉尚子 / 文庫クセジュ (2007) フランスで出版されたチェスの本の翻訳である。 チェスだけでなく、その歴史や心理、芸術など、文化全般について扱ってある。 だから、チェスとフランス語を知っているだけではこの本を訳すのは大変である。 チェスを扱った文学といえばルイス・キャロルを思い出すが、この本の訳では、こう書いてある。 (P111) 「まず最初、ルイス・キャロルはチェスを手ほどきとして使う。数学的ゲーム、なぞ、言葉遊びのアマチュアである著者は「鏡の裏側」でアリスを不気味なチェスの対局に放り込む。アリスは彼女が赤いクイーンと白いクイーンに立ち向かわなければならないと夢想する。ポーンである彼女は対局を勝つために大きくならなければならない。昇進ができて彼女はクイーンになるが、緊張が強すぎて怖い夢から醒めてしまう。」 はっきりいって読みにくい日本語だ。模試の英文和訳の回答ですか?有料で人に読ませる訳文ではない。 それは別にしても、ルイス・キャロルは数学的ゲームや言葉遊びの達人だと思うのだが、本業は数学者だからこの分野は「アマチュア」だというのだろうか。わからない。 それに「鏡の裏側」とは何なのだろうか。 ルイス・キャロルのこの本、原題は Through the Looking-Glass、日本語題は『鏡の国のアリス』のことなのだが、フランス語版の題名は De l'autre co^te' du miroir で、これを直訳したのが「鏡の裏側」らしい。訳者は『鏡の国のアリス』という本のことを知らないのだろうか。 訳者はチェスプレーヤーらしき国立天文台名誉教授(理学博士)とフランス在住の日本人(農学士)のふたりなのだが、日本の文化には暗いのでしょうね。 (P83) 「1つにはコンピュータはすべてを計算するのではないことである。可能なチェスの指し手の数は約1万120ある。これは宇宙にある粒子の数より多い。」 この天文台名誉教授の宇宙はずいぶん小さいようです。理系のほうも怪しいのか。 以前、http://ironpen.exblog.jp/3941062/で、触れた例からすると、10の120乗というのが正しいのかも、これを10120と読んだ?
by iron_pen
| 2007-11-06 22:03
| 読書・本
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