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五月兎の赤目雑記

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2010年 06月 05日

本: 「究極の田んぼ 耕さず、肥料も農薬も撒かない究極の農業」岩澤信夫

 「究極の田んぼ 耕さず、肥料も農薬も撒かない究極の農業」岩澤信夫、日本経済新聞社(2010)
不耕起農法というのがあるようで、堅い地面にそのまま種をまくと、頑健な作物が育つというものだ。怪しい話だと思っていたが、最近、その水田版のような本が出て、これが新聞の書評などで好意的に紹介されている。
朝日新聞  毎日新聞

 読んで見ると、水田を切り株なども残したまま冬季に湛水しておき、イトミミズを発生させることで、その排泄物で柔らかくなるという。なるほどそういうことなら、ありうるかもしれない。また、この「耕さず、肥料も農薬も撒かない究極の農業」では強い苗を植え、前回の大冷害でも他と比べて優秀な作柄をあげたといい、さまざまな写真でそれを示している。
どうも、この方法は、著者の辛抱強い研究を踏まえたもので、決して思いつきやトンデモではないような気がする。それが書評などで取り上げられる理由のひとつなのだろう。

しかし、どうも納得できないのは、元素の収支である。
農地では作物が作られる。水田ではコメとして収穫され、系外に持ち出される。
光合成で取り込まれる炭素・水素などは別としても、必須の肥料成分であるN,P,Kなどがコメの成分として取り出され減少するはずである。特にNはたんぱく質の重要な構成要素である。
したがって、N,P,Kなどを補給しなければ土地は長い間にどんどん痩せていき、収量は減少するはずである。江戸時代でもそのことは知られており、農民は下肥や魚肥などで養分を補給していた。
著者はイトミミズの排泄物が養分になるとしているが、イトミミズだろうが何だろうがN,P,Kなどの元素を創り出すことはできない。イトミミズの排泄物にN,P,Kが含まれるなら、それはどこから来たのだろうか?ともかく、どこからか補給されないことには、いつか生産は減少するはずである。著者も、窒素分のことについて触れてはいるのに、それが持ち出されることには触れていない。

私には次のような可能性が思いつく。
・この農法以前に投入されていた肥料が残っている。
・著者にとって「肥料」という定義にあたらない何かを補給している。たとえば、よその田でできた米ぬかを投入したりしている。
・窒素固定バクテリアがいる?でも、P、Kはどうする?
・よその水田で使われている肥料が水を介して入り込んでいる。

私は著者が何かに目をつぶっているのではないかという気がしてならない。

# by iron_pen | 2010-06-05 11:19 | 読書・本
2010年 05月 27日

戻れ はやぶさ

小惑星イトカワから地球を目指している「はやぶさ」。
満身創痍とも言うべき苦難を乗り越え、7年ぶりに地球に帰ろうとしている。
帰還は6月13日の見込みという。ここまでくればぜひ、無事サンプルを持ち帰ってほしいと思う。
そして、「はやぶさ」を支えてきた日本の科学者たちに敬意を表したい。

事業仕分けもいいが、こうした役に立たないことも大切だと思う。

# by iron_pen | 2010-05-27 21:02 | 科学技術・IT
2010年 05月 23日

「宇宙飛行士は研究成果語れ」??

今日の新聞の投書欄に「宇宙飛行士は研究成果語れ」という意見が載っていた。最近宇宙に行った山崎直子という女性が、宇宙の美しさなどを語るだけで、成果が見えないというものだ。
しかしこれは間違っている。この投書を採用した編集者も同じ間違いをしているのだろう。
彼女の役割は科学研究者ではない。宇宙に研究機器を運ぶ技術者である。研究成果など語ることはできなくて当然だろう。

むしろ、問題にすべきなのは、こうした個人をもてはやし、運ばれた装置のことやそれを企画開発した研究者のことがあまりにも報道されないことであろう。
たとえば、前回の補給機でSMILES(*)という大型の観測機器が運ばれ、それが「きぼう」に組み付けられてオゾン層破壊に関する貴重な観測データを得ていることなど、知る人は少ないだろう。
(* Superconducting Submilimeter-Wave Limb-Emission Sounder: 超伝導サブミリ波リム放射サウンダ) http://kibo.jaxa.jp/experiment/ef/smiles/

事業仕分けでいろいろうるさいが、関係者は、人気取りでなく科学の正しい成果を打ち出していくべきだとおもう。

# by iron_pen | 2010-05-23 22:05 | 科学技術・IT
2010年 04月 02日

清水女流がコンピュータ将棋ソフトと対戦

コンピュータソフトが将棋連盟に挑戦状 米長会長「いい度胸だ」

 情報処理学会(会長・白鳥則郎東北大教授)は2日、日本将棋連盟(米長邦雄会長)にコンピューター将棋ソフトとプロ棋士の対戦を求める“挑戦状”を突きつけた。米長会長は「いい度胸だ」と受けてたち、女流棋界の第一人者である清水市代女流王位・女流王将を初戦の相手にあてることにした。対局はこの秋の予定。
MSN産経ニュース 2010.4.2 16:33
http://sankei.jp.msn.com/culture/shogi/100402/shg1004021637001-n1.htm

どんな内容だろうかと思って情報処理学会のHPを見たら、どうも学会創立50周年の行事として、多くのコンピュータ将棋関係者の協力で実行するようだ。
その詳細がすごい。
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http://www.ipsj.or.jp/03somu/shogi/FAQ.html
Q: 対戦ソフトウェアは既に決まっているか
A: 合議アルゴリズムを用いる方針になっています。複数のソフトウェアを疎結合で並列計算させて、それらの意見を集約して、次の一手を決定する手法です。現在のところ、限られた実験では効果が認められており、これを実際の対局に用いる方向で検討しています。個々の参加ソフトウェアの候補は、プロジェクトに現時点で参加しているGPS将棋、Bonanza、激指、YSS、TACOS、柿木将棋などです。これを実用的にどのように組みあわせるのかは、実験を元に決めていきます。合議より単独が強ければ単独の可能性もあります。決定は本番一か月前までを予定しています。

Q: 対戦に使用する計算機は何を使用するのか
A: 現在のところ、東大、京大、筑波大などの並列処理大規模計算機環境のグリッドを使う方向で検討しています。バックアップ体制として、Xeonマシンを複数並列に繋いだ環境も並行して整備する予定です。最終的には一か月前に決まります。
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これでは前回渡辺竜王と対戦した Bonanza より格段に強い、現在までの成果で考えられる最強の条件ではないか。下位の男性プロ棋士にも十分対抗できるのではないだろうか。
渡辺竜王はフリーソフトの Bonanza を事前に自宅のPCで動かして徹底的に研究して対戦に望んだのだが、今回はそういうわけにもいかない。
今でも将棋ソフトはアマチュアトップクラスに勝っており、女流はアマチュアトップより弱いと見られるのだから、今回の強力ソフトがトラブルなく動けば女流では勝てそうも無いと私には思える。
清水女流は、将棋連盟の興行・話題づくりに、つらい仕事を引き受けさせられたのではないか?

# by iron_pen | 2010-04-02 21:14 | 将棋
2010年 02月 13日

犯罪の時効は廃止しないほうがいい

私の知っている人で、何者かに娘さんを殺害され、いまだに犯人の手がかりもないという人がいた。そろそろ時効を迎えるということで、時効の廃止を訴えており、ときおりニュースなどに出てくることもある。そういう運動もあって、時効廃止の動きがある。
報道では、死刑相当の犯罪は時効なし、他の犯罪は現状の2倍にするという案が有力なようだ。
昔と比べれば人の寿命も大幅に伸びた今、時効を迎えても関係者が(おそらく犯人も)まだまだ元気というなかで、罪が消えてしまうとうのは、例えば娘を殺された親としては納得できないのはよくわかる。さまざなな科学的証拠も残されるている場合も多いだろう。そういう点で、時効の延長は当然なような気がする。

ただ、時効の「廃止」にはどうも賛成できない。永久に時効が来ない以上、捜査は永久に続き、証拠物件なども無期限に保管しなければならなくなる。
もし時効制度がなければ、江戸時代の殺人もまだ時効ではない。犯人がわかれば、犯人死亡ということでクローズできるだろうが、犯人不明だと永久にクローズできないことにならないか。

時効100年という形でも一応残して、どこかで事件捜査をクローズできるようにしたほうがいいのでは。

# by iron_pen | 2010-02-13 18:55 | 一般・その他